Partager

1話-2 一通の手紙。

last update Date de publication: 2025-03-21 15:55:07

* * *

ある日の夜のこと。

フェリシアはあるお屋敷の台所で下級料理番として仕事をこなしていた。

ピンクがかった長い黒髪は邪魔になるのでくくり、頭巾を付け、汚れたドレスを隠すよう、エプロンを腰に巻いている。

料理を作る台所は天井が高く、煙を逃がす窓があり、

壁に調理器具がかけられ、茶色の長机にはお皿に盛り付けられた色んな種類の豪華な料理が並べられている。

そしてこの場にはシェフ、上級料理番が3人おり、

下級料理番はフェリシアを含めて6人いて、忙しそうに働いている。

その中でもフェリシアは長年務めていることにより、下級でも特別に一品だけ料理を任されていた。

けれど、どの料理も綺麗な盛り付けで、下級の自分にはとても同じようには出来ない。

それでも出来る限り、完成したビーフシチューをお皿に綺麗に盛り付け、そのお皿に白く美しい花を添える。

(よし、今日もなんとか綺麗に出来たわ)

そう、安堵すると、料理運びである着飾った女主人のイラついた罵声が飛んでくる。

「何やってんだい、早くこっちの机に置きな」

「お出しする前にビーフシチューが冷めちまうだろう」

「はい、申し訳ありません」

フェリシアは料理台から茶色の長机に完成したビーフシチューのお皿を置く。

すると、女主人はブツブツ嫌味を言いながらもお盆にそのお皿を乗せ、他の豪華な料理と一緒に運び、台所から出ていく。

そんな中、開いた扉から貴婦人達の声が聞こえてくる。

「ねぇ、お聞きになりまして?」

「エルバート様が花嫁を探していて、選ばれた家にはエルバート様の直筆の婚約の手紙が届くそうよ」

「エルバート様って、今年で21歳になられるルークス・アルカディア皇帝に仕え、公爵家のお家柄で魔討伐の軍の中でも絶対的権力を持つ軍師長である、あの、エルバート・ブラン様!?」

「えぇ、でもエルバート様は冷酷で愛のない人らしく、よほど気に入られない限り、すぐに婚約を破棄されるだろうとのご噂よ」

「そんなご噂が。呪いの手紙なんて来て欲しくないわ」

貴婦人達がそう零(こぼ)すのを聞いたフェリシアは、ふぅ、と息を吐く。

(わたしには全く関係のない噂ね)

* * *

「ローゼ伯母さま、只今、戻りました」

仕事を終えたフェリシアは、ボロ家の居間に座る伯母の後ろで跪き、いつも通り報告する。

(今日も帰ってくるのが深夜になってしまった……。きっと罵声を飛ばされる)

そんな不安を抱き、萎縮すると、

伯母はこちらを向く。

「あら、フェリシア、おかえりなさい」

フェリシアは意表を突かれた。

(あのいつも不機嫌なローゼ伯母さまが、朗らかに笑い、上機嫌、だなんて)

一体、何が起きたのだろう。

「きょ、今日も帰りが遅くなり、申し訳ありません」

「もういいわ」

「それより、フェリシア、お聞きなさい」

「エルバート様からあなた宛てにご婚約の手紙が届いたのよ」

「え」

固まるほかなかった。

なんと噂の絶対的権力を持つ軍師長、エルバートから婚約の手紙が届いたと伯母はいうのだ。

伯母はフェリシアに手紙を渡す。

自分も伯母も魔を祓う力はない。

それに伯母から自分の両親も力を持っていなかったと聞いている。

だからにわかに信じがたいけれど、

高級感のある薔薇の絵柄の手紙に、見たこともないような綺麗な直筆の文字とこの刻印の月の紋章は本物だと思うほかなかった。

「今まであなたを育ててきた甲斐があったわ」

「当然、このお話、受けてくれるわね?」

下級料理番として働く時間だけが自分に唯一許された外に出られる時間で、

心が癒される時間でもあったのに。

それすら今日でなくなってしまった。

「はい」

「ローゼ伯母さま、今までお育てくださり、誠にありがとうございました」

跪いたまま、手紙をぎゅっと抱きしめ、頭を下げる。

伯母の命令とエルバートの絶対的権力で断ることは出来ず、

フェリシアは伯母に売られるかのごとくエルバートの家に嫁ぐこととなった。

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Dernier chapitre

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   34話-5 月明かりの幸せ。

    月は今まで見た中で一番美しく、その輝きは穏やかな海面に降り注ぎ、波一つ一つを宝石のように煌かせ、遠くの水平線まで光の絨毯を広げていく。そして足元の岩場に咲く美しき花々は、月光を浴して白く輝き、まるで星々が地上に舞い降りたかのよう。と、美しき光景に心を奪われた時だった。後ろからエルバートに優しく包み込まれる。「ご、ご主人さま?」「今宵、お前とこのように美しき月を見られて本当に良かった」「はい。ご主人さま、月、綺麗ですね」「海も花も月の光で輝いています」こうしてしばらくの間、エルバートに包まれたまま月を眺め、やがてエルバートが手を離すと互いに向き合う。「ご主人さまにお伝えしたきことがあります。聞いて下さいますか?」「あぁ」「ご主人さまが家にご婚約の手紙を届けて下さらなければ、きっとこのような幸せな未来は訪れず、こんなに美しい月も見られなかったと思います」「だからご主人さま、ありがとうございます」「愛しております」(ご主人さまに、この感謝の想いが、愛がちゃんと伝わっただろうか――――)「フェリシア」「は、はい」「私もお前を愛している」「だからもう一度、あの時のように名前で呼んでくれないか?」あの時とは恐らく、初めての夜のことだろう。フェリシアは意を決し、エルバートを見つめる。「…………エルさま」月光の下で名を呼んだ瞬間、エルバートの唇が優しく触れる。とても温かいキスだった。エルバートが唇を離すと穏やかな笑みを零し、フェリシアも優しく微笑む。その後、フェリシアはエルバートと並んで浜辺の流木に座る。すると、どちらからともなく、自然に寄りかかり、肩が触れ合う。そして。(ご主人さまの、この暖かな温もりを、ずっと、ずっと、感じていたい――)と、心の中で思いながら、海を見つめた。どれだけそうしていただろう。フェリシアは昇る日の光で目を覚ました。いつの間にか眠

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   34話-4 月明かりの幸せ。

    「あの、ご主人さま? 魔は?」フェリシアは戸惑いながら問いかける。「やはりそう解釈したか。騙した形になってすまない」「私が婚約の手紙を出さなければ、こうしてお前とは出会えなかった」「だから同じように手紙でお前を呼び出すことにした」「お前とここの別荘で今宵、月を見ながら過ごしたくて」(だからいつもと違うお洒落な軍服を着ていたのね)フェリシアが心の中で納得すると、エルバートはフェリシアを離し、近くの別荘に目線を向ける。フェリシアもまた別荘を見ると、朧げではあるが、3歳まで両親と暮らしていた家と同じくらいの大きさの別荘があった。フェリシアは思わず涙する。「フェリシア、その」「もうっ」「ほんとうにすまなかった」「いえ、違うのです。生まれ育った家に帰れたようで嬉しくて……」「そうか」エルバートは安堵したようで、こちらをじっと見つめる。「フェリシア、ビーフシチューを作ってくれないか?」「はい、喜んで」フェリシアは承諾し微笑む。するとクォーツの馬車が遠ざかっていくのが見えた。フェリシアはエルバートとしばしの間馬車を見つめ、やがて馬車が完全に見えなくなると、フェリシアはエルバートと共に別荘まで歩いていく。そして、すぐさま温かみのある厨房でビーフシチューを作り始め、しばらくして完成した赤ワイン煮込みのビーフシチューを居間の木製の椅子に座るエルバートにお出しし、その隣の椅子に座る。すると窓から海が見えることに気づき、横長の机に並んだ状態で座ったまま、窓から時々海を見ながらそれぞれビーフシチューをスプーンですくって食べる。「やはり、お前のビーフシチューは美味いな」「あ、ありがとうございます」「だが、食べさせてくれたらもっと美味く感じるだろうな」(ま、まさか、ご主人さまが、あーんをご所望されるだなんて!)「わ、分かりました。では……」フェリシアはビーフシチューをスプーンで一口

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   34話-3 月明かりの幸せ。

    エルバートはユリシーズの封を解き、手紙を取り出し開く。エルバート帝爵、フェリシア嬢、この度はご結婚おめでとうございます。私はハロルドと共に牢を出て貧しい領土に追放され、その地の長と兵士として日々懸命に働いております。私共の命があるのはあなた方のおかげです。これからもおふたりの幸せを心より願っております。読み終わると、フェリシアの両目が潤む。「ユリシーズ殿下、ハロルド様と前を向かれていて良かった」「そうだな」エルバートはユリシーズの手紙をテーブルに置き、ローゼの封を解き、手紙を取り出し開ける。フェリシア、エルバート帝爵様とのご結婚おめでとう。あなたのおかげで毎日有意義に暮らせているわ。あなたは私の誇りよ。ラン、あなたの母もきっと喜んでいると思うわ。これからも頑張りなさいね。「これまでの謝罪もなしか」「良いんです、幸せに暮らせているのならそれで」「そうか、強くなったな」エルバートに頭をぽんと優しく叩かれ、フェリシアは微笑んだ。* * *そして、春が終わりを迎える日。エルバートをいつも通り玄関で待ち続けるも帰って来ない。隣のリリーシャに「エルバート様を驚かせましょう」と提案され、せっかく淡い色調の優雅なドレスを着てお洒落をしたのにこれでは意味がない。「フェリシア様、もうじき帰られますよ、きっと」「そうですね」リリーシャに言葉を返したその時。警備を兼ねながら庭の手入れをしていたクォーツが玄関から駆け入って来る。「只今、アルカディア宮殿の使いの者から手紙が」クォーツに手紙を差し出され受け取ると、その場で封を切って手紙を取り出し開く。至急、アルカディア宮殿付近の花海岸まで来て欲しい。手紙にはそのことだけが記されていた。(ご主人さまが手紙で助けを求めるということはよほどのこと)ルークス皇帝を乗っ取った魔よりも強い魔が現れ、窮地に立たされているとしか思えない。「クォーツさん、今からご

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   34話-2 月明かりの幸せ。

    * * *新婚5日目の早朝――廊下を駆ける足音が響く。「ご主人さま!」フェリシアはあるものを手に持ち、居間にいるエルバートまで駆けていくと、エルバートがこちらを見る。「フェリシア、どうした?」「先程廊下でディアムさんから頂きました」フェリシアは手に持っているものを差し出す。するとエルバートは受け取り、その一面を見る。「私達のパレードの様子が書かれた新聞か。完成したのだな」「まだ勤めまで時間がある。ここで共に見よう」「は、はい」返事をし、エルバートとソファーに並んで座るとエルバートが新聞を広げる。新聞には、自分とエルバートの姿がまるで絵画のように美しく愛に満ちた雰囲気で描かれていた。それだけに留まらず、『アルカディア皇国を救ったエルバート帝爵様と祓い姫のフェリシア嬢、壮大かつ幸せなパレードを披露! 世界をも超える祝福に涙!』との事が書かれており、嬉しさと恥ずかしさでいっぱいになる。「あ、あのご主人さま、ずっと気になっていたことが……」「なんだ?」「この結婚指輪は金でなくても大丈夫なのですか?」「あぁ、本来、貴族の結婚指輪は銀より価値の高い金で作るのが普通だ」「しかし、お前が私の髪の色が好きだと言ってくれた。それに応える為、金を銀に変えたのだ」(ご主人さま、わたしの為に……。嬉しいけれど……)「金を銀に変えたら貴族の指輪ではなくなるのでは……?」「あぁ、その通りだ。だから銀を使わず金に銀を混ぜて私の髪色に近いシルバーになるように特注で作ってくれとデザインを聞かれた時に頼み、出来たのがこの指輪だ」「そして、ダイヤも普通は輪の上に乗せるのだが、それだと引っ掛けたりして仕事にならない。よって指輪の中に埋め込むデザインにした」「それで満月のような形になったのですね」フェリシアは納得し、ふとエルバードから目線をずらすと、テーブルに置かれた2通の手紙に気づく。

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   34話-1 月明かりの幸せ。

    * * *幸せなど訪れない。ましてや愛されることなどないと思っていた。けれど――――。「フェリシア、こちらを見ろ」フェリシアは玄関の外の扉前で頭を上げる。するとエルバートは優しく微笑み、早朝から手作りした昼食のサンドイッチが入った包みを受け取る。けれどそれだけに留まらず。頬に手をそっと触れられ、とろけるような甘い口づけをされた。その上、ディアム、リリーシャ、ラズール、クォーツに暖かな微笑みで見守られ、フェリシアは恥ずかしさでいっぱいになる。エルバートの唇が離れると、フェリシアは少し怒気を帯びた目でエルバートを見つめた。「も、もうっ! ご主人さま、朝からこんなところでっ」「夜だったら良いのか?」フェリシアは昨日の初めての夜のことを、抱き枕にされながら眠りに落ちていたことを思い返し、ますます顔が熱くなる。するとエルバートはふっと和やかな顔で笑い、昼食の包みを鞄の中に入れる。「では行ってくる」「行ってらっしゃいませ」微笑むと、エルバートに頭を優しくぽんされた。エルバートの瞳から愛されているのが伝わってくる。ご婚約の手紙を受け入れるしかなく、エルバートに尽すことを心に強く誓った日を懐かしいとさえ思う。(わたしは今、こうして、愛に、幸せに包まれている)* * *その晩のことだった。エルバートは朝とはまるで違い、不機嫌な顔でディアムを連れて帰ってきた。理由を聞きたいけれど、とても聞ける雰囲気では…………。「フェリシア様、大丈夫ですよ」「昼食が妻の手作り、しかもハムとチーズ、鹿の干し肉、ゆで卵、レタス、トマトを挟んだサンドイッチでさすが新婚さんは違うと、カイやシルヴィオ、メイド達に冷やかされただけですから」ディアムがスラスラと説明すると、エルバートがディアムに冷ややかな殺気を放つ。「いつものことですからどうかお気になさらず」ディアムが笑顔でフェリシアに向けて言うと、エルバートは

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   33話-5 花嫁の誓い。

    「軍師長、ついに結婚したんですねー」「冷酷な鬼神のエルバートが結婚か。信じられないな」ふたりの言葉に続き、近づいて来たゼインとクランドールにまでも。「私も同感です。エルバート様、無事にご結婚出来て良かったですね」「全くだ。ほんとに結婚出来て良かったな」フェリシアは恐る恐るエルバートの顔を見る。するとエルバートは冷酷な表情をなんとか堪えていた。「エルバートよ、散々な言われようだな」ルークス皇帝がエルバートに声をかけ、側近と共に近づいてくる。「フェリシア嬢、ご結婚、おめでとう」側近があえて本当の父のように挨拶し、エルバートの表情が更に危うくなる。「あ、ありがとうございます」フェリシアが返すとルークス皇帝は、ふっ、と笑う。「ルークス皇帝、何が可笑しいのですか?」「エルバートよ、すまない。だが、本日はほんとうにめでたい」「我が本日この場に立つことが出来たのはお前達ふたりのおかげだ。感謝する」「そして、エルバート、フェリシア、おめでとう」「これからもふたり力を合わせ、光の道を歩んで行かれよ」フェリシアとエルバートは涙を堪えながら静かに頷いた。* * *その日の夜。ふたり用の部屋からバルコニーへ出て、月を見つめる。互いにお風呂は済ませたものの、エルバートの銀色の長髪は微かに濡れており、いつもよりも色香が増している。対して自分はただただ恥ずかしい。「フェリシア、疲れていないか?」「大丈夫です」「本当か?」フェリシアはこくんと頷く。するとエルバートは顔を近づけてくる。フェリシアもまた顔を近づけ、唇が優しく触れ合う。エルバートに髪を掻き分けられ、初めての深く長いキスが降り注がれる。倒れそうになるとエルバートが唇を離し、体を支えられる。「ここではやはり大丈夫ではないな」エルバートにお姫様抱っこをされ、フェリシアはエルバートに抱きつく。そして優しく部屋のベッドに座らされ

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   3話-3 呼び出しと特別な晩ご飯。

    エルバートは瞬時に振り返り、月が夜空に光輝く中、剣を抜き――――、ずばっ!魔を剣で真っ二つに美しく斬った。すると、魔は浄化され、光と共に消えた。――終わったか。エルバートは鞘に剣をカチッと入れる。それにしても、今日は特別に麻紐で髪をくくり、魔除けの効果は上がっているし、魔が自分をつけ狙うなどあり得ないはずだが。だとすると、自分を乗っ取り、帰る目的であったとするならば、魔の狙いはフェリシアか?調べた結果では“フェリシアには魔を祓う力はない”と出ているが。(まぁ、なんにせよ、浄化は終わった。早く帰るとしよう)* * *「ご、ご主人さま、おかえりなさいませ」しばらくして

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   3話-2 呼び出しと特別な晩ご飯。

    ルークス皇帝に冷やかされ、エルバートの機嫌が悪くなる。カイに言われる前から自分も花嫁候補のことで冷やかされる予感はあったが、ルークス皇帝にまで直接冷やかしを受けることになるとは。ただただ恥ずかしく、腹立たしい。「冷やかしてすまない」「まぁ、機嫌を直せ。めでたきことなのだからな」「お前とこのような話が出来て、嬉しく思うぞ」ルークス皇帝は心内を伝えると、真剣な眼差しを向ける。「それに、身分の低い女を傍に置いたのはお前のことだ、ただ胃袋を掴まれただけはないのだろう?」「はい、魔を祓う力を持つ者の家系の女にございます」エルバートの答えに、ルークス皇帝は納得する。「そうか。先が楽し

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   3話-1 呼び出しと特別な晩ご飯。

    * * *しばらくして、エルバートはディアムを後ろに従えて宮殿入りをする。アルカディア皇国の宮殿内は豪華絢爛(そうらん)。しかし、この銀の髪のせいで普段から一際目立ち、使用人達の注目の的にされている。そして今日は覚悟をしていたが、案の定、声を掛けられた。「エルバート、花嫁候補のこと、宮殿内で噂になっているぞ」「ついに女に胃袋を掴まれたか」この優しそうな青年はアベル・ノーチェ。自分とは同期で仲が知れている。「うるさい、わざわざ言いに来るな」冷たい口調で返すと、もう一人、明るく元気な青年に声を掛けられる。「あー、だから軍師長、今日、髪くくって、いつもと雰囲気が違うんですねー」

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   2話-2 晩ご飯の味。

    「特にビーフシチューは興味を持つキッカケとなった料理で、最近また口にしたばかりだからすぐに同じ味だと分かった」「そう、だったのですね」フェリシアは涙を右手で拭いながら返す。「あぁ。だが、婚約の手紙を届け、お前を花嫁候補にした理由はもう一つある」「え、もう一つ……?」聞き返すと、エルバートは真剣な眼差しを向ける。「調べた結果、お前の両親が魔を祓う力を持つ者だったからだ」「え、そんなはずは」フェリシアが動揺するも、エルバートは話を続ける。「料理の皿にいつも添えていた花が、魔を祓う効果のある花だった」「その花を知っているということは力を持った家系かもしれないと思ったから調べた」

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status